― HQCDとの出会いをお聞かせ下さい。
金野氏(以下、金野):きっかけとしては、通常のCDプレスをメモリーテックにお願いしていたので、その流れでご紹介していただいた感じですね。
既に市販で販売されていたHQCDのサンプラーを試聴させていただきました。他の高音質CDも含めて試聴させてもらったのですが、HQCDが一番ちょうどいいと思ったのを覚えていますね。 もちろん、聴いた音源のジャンルにも依ると思うのですが、HQCDは他の高音質に比べて、マスターに近くて、それでいて仕上がりが自分のイメージに一番近い・・・と感じました。音の抜けや透明度が特に良いな・・・という印象を持ちました。
― HQCDを、実際に御社のコンテンツで作った際の印象はどうですか?
金野:通常のプレスよりも、完成形のイメージがマスターに近い形にできたというか・・・音質劣化の度合いも極めて小さく、不満が非常に少ないというのがありますね。音も、マスターの透明度を維持している。
通常のプレスの場合だと、(音の)ひずみ成分だとかピークに、CD特有の「ジャギッ」とした部分を感じていたのですが、そこが極めて減って滑らかになっていますね。音の立ち上がりもちゃんとしてますし、音圧感も上がって聞こえましたね。でも、何より一番は透明感ですね。
― CDの「ジャギッとした部分」は、音楽関係者の様々な方からよく聞く言葉でした。
鳥越: HQCDは上(の音)の伸びが良く、透明感や立ち上がりはかなり評価されていますが。そうなると一部のロックですと、ちょっと下(の音)が物足りないという部分をおっしゃる方も・・・。
金野: ひずみが減ると、特に下(の音)が薄く聴こえてしまいますが、逆に、そこは求める必要は無いのではないのかな・・・と思っています。例えば、安い外国のプレス製品なんかによくありますが、その「ジャキジャキ」したようなところがピークとして聞こえてくるので、実際には音圧感があるわけじゃないのにやかましいことで迫力があると錯覚してしまう場合が多々あると思います。やはり、ちゃんとしたシステムでは観賞に耐えられないものになってしまいます。
― 2010年5月と昨年末に、HQCDをリリースされていますね。
金野: 自分の本心で言えば・・・HQCDのSACD的なものが出来たらいいなあ、と。
もちろん、規格など、色々難しいことは知っています。(苦笑)
自分としては、よりいい音を追求しているので。「16ビット44.1KHe」を超えたものを求めていると言うか。 もし、その実現に何か自分が出来るなら、是非、協力したいとは思っております。
鳥越: やはり、96Khe/24bit,192Khe/24bitよりもDSDの1bitの方が良いですか?
金野:どちらも良さがありますが、1ビットのほうははるかに透明度がありますね。何より、すごく自然な感じがありますね。音圧感は減ったとしても、結構小さな音量でもしっかりと透明感があり、きっちりと前にも後ろにも(音が)出てくるので、魅力的ではありますね。
録音システム的に考えると、ピラミックスとか32ビットなど色々ありますけれども。使いたいプラグインがあまり無かったり、最終的な仕上げまできちんと出来なかったり・・・と言う問題もありますね。今は、192Khe/24bitの中でどのぐらい出来るかを弊社では取り組んでいるところです。
鳥越: 通常、こちらで録音されているのは、1ビットもしくは192Khe/24bitで録られていますか?
金野: ジャンルによっては192Khe/24bit、ガッツのあるものやアタックの強いものにしたい場合に関しては96Khe/24bitで、など分けています。発売メディアがCD限定の場合は、44.1Kheでデータが割り切れるように176.4Khe/24bitや88.2Khe/24bitなどでも録音しています。
鳥越: こだわって色々試行錯誤されているのですね。
― 現在、御社で扱っているジャンルは幅広いのですが、今後HQCDで取り組んでみたい方向や、別のジャンルなどはありますか?
金野: 実は、全ジャンルをHQCDでやりたいですね。どのジャンルも、HQCDで出すメリットは非常にあると思います。本当に、全部HQCDで出したいですよね。
まだまだHQCDと通常CDの差が、あまり一般に知られていないんじゃないかと、心配しています。HQCDだから選んで買う・・・と言う動きがもっとあってもいいのかなと。
折角こだわって、とてもいい音ができたのに、もったいないな・・・とまだまだ感じますね。今後、一般のお客さんに、もっとHQCDを知ってほしいと思いますね。
ここまでこだわりがあり、付加価値のあるものなので、もっと通常CDよりも値段が高くても、いいとさえ思っています。
鳥越: 本当にそうですね。そういっていただけてうれしいです。
― HQCDの今後の展開として、ご意見として。
金野: 自分の勝手な考えでは、HQCDは今後のスタンダードになっていけばいいな・・・と思っています。もちろん、コストや色んな面の問題もあるかと思いますが。一般の人が、「HQCDは通常CDよりも音がいい」という意識で手にとってもらえる機会を増やしていだだけるといいですね。
高音質CDが3種類も出てしまったから、お客さんも迷ってしまっているのかもしれないですね。
鳥越: そうですね、今はVictorさん のSHM−CD、SONYさんのBlu-spec CDと、弊社のHQCDが出揃った状態ですので。
最近、海外では高音質ブームが立ち上がってきて、特に中国では高級オーディオブームの波も来ていますので、HQCDの引き合いも多いですね。 ただ、新しい技術にはコピー問題がつき物なので。。。
金野: そうですね。以前、弊社のコンテンツでも問合せが来たことがありました。カナダ人の人が、中国で入手した音源を問い合わせてきたり・・・。(苦笑)色々ありますね。
― 今後、HQCDに望むことはありますか?
金野: そうですね、これからプレスをする際に、「もっと原音に近い状態」のものは作りたいという希望はあります。もちろん、今でも、色々わがままは言わせて戴いておりますが・・・。
鳥越: 10数年前から、社内に「音質対応グループ」というセクションを作りまして、いかに良い音を作っていくかを試行錯誤してきました。工場では同じラインで作っていても、メンテナンスなどが入ったりするだけで、微妙な音の違いなどが出てきてしまいます。なので、音質対応グループから工場に行って、その都度音質をチェックする・・・という動きを行ってきました。それは非常にコストがかかるものではあるのですが、メモリーテックの「音の良いものを作ろう」という方針のもとに、頑張っています。量産と制作は相反するところがありますので、最初は色々大変でしたが、生産現場でも理解は深まってきていると思います。
金野: お互いに、いい音を求めていきたいですね。

株式会社ティートックレコーズ 代表取締役。
トータル・サウンド・アーティスト。9歳から楽曲制作をはじめ、10歳では定期的に路上ライブを行なうように。専門学校入学のため上京後、クローバルライツでアーティスト指導を受ける。2000年11月ファーストアルバム「リファレンス」をリリース、高評価を得る。その後活動の幅を広げ、本格的に新人プロデュースを行うため2004年11月に有限会社ティートックレコーズ(現、株式会社ティートックレコーズ)を設立。翌年にはセカンドアルバム「リベンジ」もリリースし、各メディアにて話題を呼ぶ。
2006年、ジャズピアニスト秋吉敏子のコンサート&ライヴレコーディングを手がけ、同作品「渡米50周年日本公演」は「2006年度ジャズディスク大賞日本ジャズ特別賞」「ミュージックペンクラブ賞・ポピュラー部門最優秀作品賞」をはじめ数多くの賞を受賞。2009年には彩花-iroha-「Dear Souls」にて「ジャズディスク大賞最優秀録音賞」を受賞。J-POPからジャズ、クラシックまで、ジャンル、形態を全く問わずトータルプロデュースを行っている。


長く音楽業界に関わり、現在メモリーテック株式会社・スタジオ事業部部長。高音質のHQCD開発に参加。 業界でも由緒あるスタジオ「ワンダーステーション」を率いて、現在も「音作り」の根本から心血を注いでいる。
